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振ってみる。

こんな時期でも咲くカリステモン・ドーソンリバー。
[画像をクリックすると大きいのが見られますが、本文とは一切関係ありません。]

誰かしら人には言えないというか言いにくい奇行癖を持っているのではないか。ここだけの話、私の場合、それは指揮真似である。

夜中、愚息(仮名)はもちろん御主人様(仮名)も寝静まった頃、大切にしているSennheiserのヘッドホンHD580を取り出して、ステレオアンプに接続する。普段めったに聴かないため埃のかぶったロマン派のオーケストラ音楽のCDを注意深く選択して棚から取り出し、CDプレイヤーにセット。ショスタコービッチやチャイコフスキーならムラヴィンスキー、マーラーならバーンスタイン、シューベルト以前だと軽快なテンポの演奏が多い古楽器のオーケストラが中心になる。そこで音量をいつもより心持大きめに設定し、厳かに演奏開始ボタンを押す。そしてやおら立ち上がり、鉛筆を指揮棒に見立てて右手に持ち、目の前にいる(つもりの)レニングラードフィルハーモニー管弦楽団(ショスタコービッチの場合)にアインザッツを出す。そして渾身の限り、全身を使って狂ったように指揮に没頭するのだ。大概の場合実際に自分が演奏したことあるか聴きなれた曲なので、暗譜で最後まで振り通す。楽器の配置も頭に入っているので、きっちりと指示も出しながら。

ロマン派のオーケストラ音楽は大曲が多いので、1曲まるごと通して振るとかなりの運動量になり汗まみれになる。いくら夜更かししていても問題のなかった全盛の学生の頃は、雰囲気を出すためにスーツまで着込んで前半・休憩・中・後半とフルコンサート規模のプログラムを組んでやっていたものだ。今思えばまったくもって正気の沙汰ではない。最近は体力も衰え1楽章分で挫折することが多いし、もちろん部屋着(ジャージ)である。零落して見る影もない。ってそんな大げさなことではないし、いずれにしても不毛なことこの上なしである。

ちなみに、まだ御主人様(仮名)にはバレていないはずだが、扉に背を向けてヘッドホンをしているので、目撃されていたとしても見なかったフリをして扉をしめてそのまま退出されてしまっては私が知る由もない。万が一目撃されていたら…想像するだけで恐ろしい。

なお、ここだけの話、入浴前に全裸で鏡の前でレイザーラモンHGばりに両手を広げて意味もなく腰を振っているのがバレたら自殺するかもしれないのだ。

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武蔵野在住の不惑研究者の備忘録。 息子と娘に嫌われないことを目標に日々過しています。

ちなみに登場人物はほとんど匿名ですが、 「御主人様(仮名)」とは私の妻で「愚息(仮名)」は息子のことです。

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