Piazzolla: Sinfonia de Tango(シンフォニア・デ・タンゴ)
★★★☆☆(ピアソラ原点ここにあり)
以前に予告したとおり、私なりのピアソラのディスコグラフィを記述してみようかと思うのだ。実はピアソラには「海賊版」と呼んでも差し支えのない劣悪な録音がたくさん出回っており、そのような録音はえてして格安の値札がついて店に並んでいることが多い。以前、何も知らない私はその安さに惹かれてそれらを購入し、聴いてみて失望することが多かった。「ピアソラってこんなものか」と。
ところが、80年代のスタジオ録音に出会って、その認識は全然間違っていたコトが分かった。この分野では有名な斎藤氏が著した「闘うタンゴ」に付録として記載された膨大なディスコグラフィにあるような正しい情報を手に入れていれば、極上の録音にありつくことができるのだ。
こうして私のピアソラCDコレクションへの道が始まった。筋金入りのコレクターからしてみれば、吹けば飛ぶようなチャラいコレクションかもしれないが、私なりにいろいろと揃ってきて耳も肥えて来たようなのでピアソラの布教活動の一環として書いてみようと思う。
ということで、ピアソラの膨大な音楽活動の原点ともいえる録音で始めてみよう。ナディア・ブーランジェ(ストラヴィンスキーなども教えた教育者)に学びながらタンゴで食っていくことを決めた直後(1955年)にパリで録音したもの。時代が時代なので録音はモノラルで音質もそれなりではあるが、非常に素晴らしい内容。ここで紹介した演奏を含むパリ時代の録音の集大成「パリ1955」というディスクが廃盤のため入手困難なのが惜しまれるが、せめて一部を補完するという意味でも(別項に挙げる予定の)Para Colecctionistasのボーナストラック群と併せて聴きたい。