Piazzolla: New Tango
★★★★☆(バートンのクールな競演)
ピアソラのキンテートが世界的なジャズ・ヴィブラフォン奏者であるGary Burtonと1986年にモントルー(スイス)で演奏した模様(おそらくジャズフェスティバル時)を収めたもの。このCDは(月並みな表現で恐縮だが)『ジャズとタンゴが出会った』名演である。ほとんどの曲が書き下ろしのようで、特にVibraphonissimoは、ピアソラの得意とする3-3-2リズムを低声部旋律としてバロック音楽のように織り込んだ、カッコいい旋律だ。バートン自身は後のBBCのインタヴューで「ピアソラの音楽は全てが楽譜に書き込まれており、ジャズ畑の人間としては、まずそれに慣れるのが大変だった」と懐述しているが、聴衆との相互作用で生じる即興性を大切にしていたピアソラのキンテートもジャズマンから見れば、まだ音楽の枠がきっちり決まっていたということだ(拘束の度合いはどちらかというとバロック音楽ぐらい?)。CDにはボーナストラックとしてMuerte del Ángel(天使の死)が入っており、これも名演。
ただ、同じ面子で日本をツアーしたときの方が素晴らしい演奏だったという話もあるようだが、それが聴けないことを悔しがらずにそれをを想像して楽しみたい(でも本音は悔しい)。