今月(12月)の古楽情報誌アントレに、 「バロック・チェロの野望〜日本のバロック・チェロ界の現状について」 という投稿記事が掲載されました。 筆者は中川剛さんというバロック・チェロ、チェロピッコロ愛好家の方です。
内容の趣旨は、バロック・チェロという楽器が、 日本の古楽界ではあまり取り上げられる機会がないという現状の提示、 そしてもっと浸透して欲しいという様なことでした。 確かに、アマチュア界にはたくさんのヴィオラ・ダ・ガンバ奏者がいますが、 バロック・チェリストというのはほとんど例を見ません。
しかし、アマチュアのモダン・チェリストなら山程います。でなきゃ、 Freudeに 見られるように、こんなに多くのアマチュアオケは成り立たない筈です。 じゃ、何でこの人達がバロック・チェロを演奏することがないのかと言うと、 「エンドピンがなくて、足で支えてるといつかヘルニアになりそう」とか 思っている………ハズはないですね。
恐らく、そもそも素晴らしいバロックのレパートリーを知らないのではないか、 と思われます。バロックと言えば、バッハやパッヘルベルのカノン、 ヴィヴァルディの四季が定番です。 ですが、例えば初期イタリアバロックのエネルギーに満ち溢れた音楽などは、 知られる機会が余りありません。
また、それほど小さい楽器ではないので、日本の住宅事情からすれば、 二台目として新たにこんなカサバる楽器を買うのは躊躇してしまうでしょう。 ハードケースにいれたら、邪魔で仕方ない筈です。 また値段ももう一台となると、予算的にも苦しいかも知れません。
モダンチェロをやっていたけど、ヴィオラ・ダ・ガンバに転向したという人は 沢山います。何故でしょうか? 古楽器の魅力の一つとして音色が挙げられますが、 バロックチェロの武骨な音色よりはヴィオラ・ダ・ガンバの優しい音色の方が 好まれるのでしょうか? 演奏法が全く異なるガンバよりは よっぽどバロックチェロの方がとっつきやすいと思うのですが…。
某チェリストI氏も 常々バロック・チェリストの数の少なさを嘆いていて、 チェロソナタの名曲がほとんど知られていないことを残念がっています。 実は、今後は私達のアンサンブルの演奏会でも、 チェロソナタを取り上げられたらなと考えています。御期待下さい!
今日の推薦CD: | |
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まさしく「チェロの野望」という題名のCD。CorretteやBoismortierなど、 普段聴く機会のないフランスのチェロの作品集です。 この時代のフランスは低音楽器としてはヴィオラ・ダ・ガンバが全盛でしたから、 そのレパートリーをチェロでやると言うのはマサシク野心的とも言えます。 鈴木秀美さんのアマティの甘い音色と開放弦を多用した奏法は、 時にはガンバと聴き間違える程の優雅さを醸し出しています。 |