1999.01.07「ラーメンと私」

冬はラーメンの美味しい季節です。 私も日本人の典型に洩れず、ラーメンが大好きです。

大学に入学して、 まずサークルの先輩 Yさんに教わったことは、 ラーメンの食べ歩きです。 その先輩に初めて連れて行って貰ったラーメン屋が新宿の『桂花』でした。 むむ、何だこれは。麺は常識以上に固いし、 スープは相当な臭いを発しているではないですか。 「何回か食べてみると良さが分かるよ」とYさんは言ってくれました。 確かに一回目はピンと来ませんでしたが、 二回目には美味しいと思えるようになったのです。

また、他の先輩にお願いして、 三田の 『ラーメン二郎』 にも連れて行ってもらったこともあります。 ここは慶応の三田キャンパスのすぐ近くにあるのですが、 注文方法が難しく、客も学生ばかりで掟が多く、オヤジは頑固者と、 ヨソ者が近付きがたい雰囲気を持つラーメン屋でした。 とにかく行列は長く、飽きれ果てるぐらい待たされ、カウンターに座り、 覚えたての呪文のような注文をつぶやきました。 麺はぼそぼそ、スープは塩辛く、とにかく食べ難い。 食後の満腹感は期待値を遥かに越え、夜になってもお腹が空かないのです。 しかし、一週間後に何故か授業中にそのタベモノ(ラーメンとは呼べない)が、 無性に食べたくなりました。 「一説ではオヤジが入れている白い粉は習慣性のあるアブナイ粉ではないか」 という噂がながれるくらいです。

こうして、段々ラーメンとは奥の深いものだと言うことが分かって来ました。 普通学生というイキモノは時間はあるが、お金はありません。 自分もその例にもれず、ラーメンの食べ歩きをするようになるまで、 あまり時間はかかりませんでした。 どんなに忙しくとも一ヵ月に一度は新しい店に足を踏み入れることを目標として、 ラーメンのガイドブック(B級グルメ文庫)を片手に、とにかく食べ歩きました。 一生懸命駅から歩いてようやくたどり着いたラーメン屋が定休日で休みだったり、 ラーメン屋を見つけるまで30分も探し回ったり、いまから考えると無駄なことに ずいぶんと貴重な時間を費したモノです。

この習慣は今でも続き、自分の車を購入した今となっては、 ラーメン屋の時間帯とロケーションに係わらず行けるようになってしまい、 こうしてチャクチャクと体重は増えて行くのでした。 イカンイカンと思っていても、直らないようです。 身体に悪いって分かっていても、 美味しいスープって最後まで飲み干したくなるし、 (*2) 替玉があると聞くと、 どうしても替玉をしたくなってしまうのです。誰か助けて!

注:

(*1) 先輩Yさん
現在では某M芸術館の学芸員をやっていますが、 傘をさしチェロを担いで自転車に乗り、 見事にコケてネックを折るという破天荒な学生生活を送って いらっしゃいました。CDを片っ端から買い求め、食事に窮するという ライフスタイルも彼から教わったものです。
(*1) 替玉
九州系のラーメンで多くみられる、麺玉のおかわり。 スープはそのままで、新たに麺を追加してもらえる。

今日の推薦CD:
J.M.Leclair: "Complete Flute Sonatas"
B.Kuijken (Tr), W.Kuijken (Vg) & R.Cohnen (Cemb)
Accent, ACC 58435/36D

このCDは全くラーメンとは縁もゆかりもありません。 ただ単にレーベルのデザインが中華丼模様というというコジツケだけで推薦しますが、 内容は十分推薦に値するものです。

ルクレールはヴァイオリン奏者として当時一世を風靡したそうですが、 沢山のヴァイオリンソナタを残しています。 その中の幾つかは、フルートでの演奏が可能だと明記してあり、 それらを全て収録したのが、この録音になります。

実はこの2枚組のCD(というか私が初めて手に入れたのはLPでした)、 私トラヴェルソの演奏を始めるきっかけとなった、大変思い出深い演奏です。 澄んだ音のバルトルドのフルートと、 研ぎ澄まされたヴィーラントのヴィオラ・ダ・ガンバは、 残響の多い場所での録音状態も素晴らしいのもあいまって、 後期フランスのこの美しい作品を際だたせています。 私にとって、バルトのベスト盤です。


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